2015年10月11日

まずは番外編から

 右上奥歯の歯神経のあたりがものすごく痛いです。
近くに歯医者が何軒もあるというのに、その全てが日曜祝日休みというのはどういうことなのでしょうか。
というか、銀行とか見ていつも思うのですが、一般の人間が休みになる土日祝日に閉めて、働いてて来れない平日の時間に開けておくというのはどういうことなのでしょうか。
この構造に何か理不尽さと違和感を感じるのでそのうちネタにしましょう。


 現在の作業状況です。
まず結論から、本編36ページと短い番外編12ページ前後の2編を作ることにしました。
いろいろ考えた結果、本編でいろいろ説明してるとページ数が足りないとか、内容が説明臭くてくどくなるとかそう言ったことを考えたら、いっそ思い切って2本描こうと思い切りました。
番外編は世界観を補足したりする導入編として軽く描くつもりです。

 今回は何か中心となるモノをガッチリ決めてそれをメインに掘り進めようと考え、話を考える前にタイトルから決めました。
タイトル名は「砂と水のヒストリア」です。
あからさまに「砂」と「水」と「歴史」がテーマの作品です。
テーマが決まったからと言ってすんなり行くわけでもなく、既にプロットを4〜5本没にしてます。
おかげでいろいろ設定や世界観、作品の方向性はなんとか固まって来ました。
とりあえず、まずはバトル的な展開や過剰なバイオレンス表現は避けるように気を付けようと思っています。
爆発もしません。
恐らく、推理、探偵的な側面の方が強くなるかと思われます。
また世界観に関しても世界そのものではなく、一つの街だけでの物語に終始するようにします。
壮大なスケールみたいなものをは捨てて、一つの街を掘り進めることにより、濃密な街にしたいと思っています。
あと、主人公の設定はいろいろ弄り回してますが、キャラクターデザイン自体は過去の没ネタから変わってません。
グダグダ何か言ってますが、とりあえず今回は番外編のプロットを載せておきます。
12ページ前後くらいを目安にしているので、短めです。

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 黄金が泥に変わる雨の日は、ふとしたことで思いがけないものを目にする。
その日は丁度、そんな日だった。

 歴史小説家 ミズノ著『海辺の隣人』より



 993年7月10日、激しい雨が小さな木造小屋の屋根を激しく叩いている。
時折大きな音がガタンッと鳴ると、建物そのものが大きく揺れるような振動が伝ってくる。
その度にギクリと上を見上げながらも、二人の少年達は屋根が落ちてこないように祈りつつ本棚を漁っていた
「ライブ、そろそろもどろーぜ!! こんなボロ屋じゃあいつ崩れてもおかしくねーよ!!」
「まってまって、あと1冊だけ!!」
ライブと呼ばれた白いクセッ毛メガネの少年は、慌てて本をカバンの中へと押し込もうとする。
「早くしろよな。」
その様子を見て溜息を吐くと、長い群青の髪の少年コータは窓の外に目を移した。
窓の外では矢のように浜辺を穿つ天滴と、それに撃たれようと平然として歩き回る無数の人影達が見える。
パッと見ればそれはただの人影なのだが、アレ等は人間でないことをこの街の人間であれば誰でも知っている為、コータにとっては特別驚くような事象でもなかった。
あの、あたかも人間のように振る舞っている奴らは、雨の間だけ我が物顔で街を徘徊する単なる泥人形。
少し普通でない部分に触れるとすれば、まるで意志でもあるかのように好き勝手に動き回ることくらいだ。
「大体よお、そもそもここはオレんちで、そこ等の本が濡れたって別にお前は困らないだろ。」
窓の桟に肘をかけて、再び一心不乱に本を仕舞いこもうとするライブに向き直る。
「いやいや困るよ。ここには貴重な資料が沢山あるし、雨に濡れて台無しになったら僕の天才的な頭脳の持ち腐れだよ。」
「自分で天才とか言うか。図書館行けよ。」
「ここが一番落ち着くんだよ。」
ライブがコータへ朗らかに笑いかけた。
「何だかんだ言いつつ手伝ってくれるコータは優しいよね。」
「チッ。」
こうも屈託のない笑顔を向けられると、コータも流石に文句をひねり出す気も失せたようだった。
少し恥ずかしそうにそっぽを向き、また雨の景色を観賞しだす。
「ん?」
その雨の中に一つ、変わった動くものをコータは見つけた。
「おいライブ、ちょっと来てみろ。ありゃあなんだ?」
カバンの紐を結んでいるライブを手招きで呼ぶ。
「ほらアレ、あの足引き摺ってるみたいなヤツ。人間? なのか?」
「にん……ぎょ……?」
もう少し二人が目を凝らしてみると、その下半身にはヒレのような形をしているのが確認できた。
「うん、昔本で見た人魚の挿絵に似てるかも。上半身が人間で、下半身が魚のヤツ。」
そう言ってライブがササッと人魚の絵を描いて見せると、コータは絵を取り上げ訝しげに睨んだ。
お世辞にもライブの描いた絵は上等とは言えず人魚と言うよりは腕の生えたヘビに近かったが、何を言わんとしているかは付き合いの長いコータは察することができた。
「……アホくせー、人魚なんてそんなお伽噺じゃあるめーし。」
「でも、この世にはまだ知られていないことが沢山あるんだよ、父さんが言ってたもの。行ってみようよ。」
「マジで?」
コータは不平そうに下唇を釣り上げた。



 コータとライブが傘を差し、人魚の元まで駆け寄る。
しかし、この土砂降りの雨の中では二人のさしている小さな傘など気休めにしかならず、結局二人は体半分が水浸しのような状態であった。
「うん、やっぱり人魚だよこれ、足が魚の形してるもの。」
二人をまるで意に介さず、人魚は浜辺をナメクジのようにじっとりと這いずっている。
「この人魚は何をしていたんだろう? 海に帰るのかな?」
「海とは逆方向に進んでるから、街の方に向かってるんじゃねーか?」
「移動するのも辛そうなのに何でだろう?」
ライブは何かと感情移入をしやすい性格であり、人魚の様子を見てるだけで不安げだった。
「こいつは結局は泥人形だから、昔にあったことだ。まぁ、しばらくみてりゃ何か分かるだろ。変に手を出そうとすんなよな。」
「……わかったよ。」
コータはライブが今にも人魚の手助けをしたいとでも言いだしそうな気配を感じとり、先手を打って釘を刺しておいた。
この街に雨の間だけ現れる泥の生き物たち。
これ等は実際には"今"を生きているモノではなく"過去"に生きていたモノであることが、昨今の学者達の研究の結果判明している。
この泥人形達は、この土地の黄砂に雨が混じると生まれるようで、いつの時代の過去が現れるかは雨の成分とかが影響しているのだとか。
何にせよ、この人魚は泥人形である以上過去の出来事を再現しようとするのである。
二人は黙って人魚を観察し、その行動を見守った。
人魚が海辺の防波堤を超えた先、苔むした犬の石像前までたどり着いたところで歩みを止め、像の台座の根本に寄り掛かって腰を下ろす。
「休憩?」
「さあな、案外ここが目的地なのかもな。」
それっきり人魚はその場を動かなかったが、たまに空を見上げたかと思えばふぅと大きなため息を何度も吐いていた。
この様子を眺めて小一時間、コータもライブも動きのない観察にやや飽きが来ていた頃。
次第に雨脚が弱くなり、けたたましい雨の音も聴こえなくなってきた。
「やばい!! 雨が止みはじめたぞ!!」
「雨が止んだらあの人魚も崩れちゃうよ!! どうしようコータ!!」
コータは少し考えると、一つの案を閃いた。
「えーとバケツ!! バケツに雨を溜めておくんだよ!! 急げ!!」
二人は自宅に一目散に戻った。



 バケツになみなみと雨水を蓄え人魚の泥人形の元に引き返した頃、既に雨はあがり太陽がカラカラと辺りを蒸し焼き始める。
日光を照り返す黄砂の輝きが、まるで街を黄金のように彩り直し、それと共に泥人形に支配されていた街にも人々の活気が戻り始めていた。
「あーあ……やっぱり間に合わなかった。」
泥人形の人魚はカタチが崩れ、砂に戻りかけていた。
「とりあえず一か八か、雨水をぶっかけてみようぜ。」
コータが人魚のなれの果てにバケツの中身を浴びせる。
すると、人魚は再びその姿を取り戻し、肩を大きく動かす。
「よっしゃ、元に戻った!!」
「やった!!」
二人が意気揚々とスパンコールする傍で、人魚の泥人形は指で地面をなぞり始めた。
「お?」
ピタリと止まってその様子を凝視する。
「この国の言葉みたいだけど、ちょっと字が汚くて読めないね。コータは読める?」
コータも十分に字が読みとれたわけではなかったが、かろうじて読めた部分の前後から意味の繋がる文脈に直して解読した。
「んー……あるべ……る……とさんへ……わた……しは……まってい……ます……。」
「メッセージなのかな。」
「っつーことは、この人魚は誰かと待ち合わせをしてたってことか? メッセージなら、だれかが見に来るはずだしな。」
そうこう話しているうちにも、人魚の泥人形はじわじわと水分を失って砂に戻りかけていく。
「ねえコータ、そのアルベルトって人探しに行こうよ。このままじゃかわいそうだよ。」
「始まったよ……。」
お人好しが過ぎる友人の言葉にコータは頭を抱えた。
「お前だって知ってるだろ、こいつは実際にはもうここには居ないんだっつーの。泥人形助けたってなあ……!!」
「コータは知りたくないの? 本当に人魚が居るなら、これは歴史的大発見だよ!! このまま放っといたら何も分からないまま砂に戻っちゃうよ!!」
「う……ぐ。」
ライブがコータの好奇心に揺さぶりをかける。
コータ自身は未知への探求心が人一倍強く、本来ならばライブ以上に駆け出したいのはコータの方であった。
しかし、今回彼が渋っているのには一つの理由があった。
「ライブ……実はオレ、魚……苦手なんだ。」
「あ、それで今日はこんなにグズッてるんだね。」
ライブが満面の笑みを浮かべると、コータは忌々しそうに人魚に視線を向けた。
「うっせーよ。わかった!! 今から本気出すからな!!」
「うん!!」
コータが悪寒を堪えて人魚を見下ろすと、よくよく見てみるといくつかのアクセサリーを付けているのが見受けられた。
「ひょっとしたら分かるかもしんねー。天才人間図書館のライブくん、こん中で分かるモノあるか?」
ライブに人魚の泥人形が模しているアクセサリーのいくつかを指して見せる。
まじまじと見つめた後、ライブは残念そうに首を横に振る。
「ごめん、僕が今まで読んできた本には載って無いね。デザインも全く違うし。」
「そうか、じゃあある程度絞れたな。」
「え?」
「だってお前が読んでる本は大体歴史書とか、そういう古い本ばっかだったろ。殆どの本を丸暗記してるお前がわかんねーって言うんなら、比較的新しいものに違いねえぜ。」
気落ちしているライブの背中をバンバンと叩く。
「見た感じ今風ってデザインでもねーかな。きっと30年とか50年とか、そのくらい前のものだろ。」
「なるほど、知らないって言う事から分かることもあるんだ!!」
ライブは目を輝かせて感心している。
「そんなに古くねーんなら雑貨屋とか仕立て屋とかに聞いてみれば、どの時代のモノかは分かる。時代が分かれば大体年齢も絞れる。年齢を絞って名前の聞き込みをすれば、案外見つかるかもしれねーな。」



 二人は比較的老舗の雑貨店やコータが下働きをしている仕立て屋等を回り聞き込みをし、その後は街のアンダータウンの老人会に顔を出したりなんだりをした。
それが終わる頃にはすっかり夕焼けが街を燃やしていた。
「じーさん!! 早く早く!!」
「年寄を労わらんかいまったく。」
「すみません、コータってばすっかり興奮しちゃって。」
終わる頃にはライブ以上にコータの方がすっかりのめり込んでいた。
二人が老人を連れて犬の石像の元へたどり着くと、人魚の泥人形はもう殆ど原型を留めていなかった。
「なんじゃこんなところに連れてきおって。」
「アンタに見てもらいたいもんがあるんだよ。」
コータは石像の脇に置いておいたバケツを持ち上げる。
バケツの中の雨水も残り少量となっていたが、石像の前の砂の塊に惜しげもなくざばっと降り掛けた。
黄砂が再び、人魚の姿を模し始める。
「よし、まだ大丈夫だったか。」
「ん? おお? これは……人魚!?」
老人がその姿を見ると腰を抜かしてべしゃりと尻もちを着いた。
「え? じーさんを待ってたんじゃねーのこの人魚?」
「まさか人違い?!」
予想外の老人の反応に二人も仰天する。
だが、人魚は老人に飛びつくと、首に腕を回して抱き着いていた。
「ぬああ!? なんじゃあこりゃあ!!」
老人の叫びと共に、人魚の泥人形は崩れ落ち、再び砂に戻っていった。
「どういうこった?」
泥だらけになった老人を眺め、二人の頭には大きなクエスチョンマークが浮かんだ。
「おやおやおじいさん、叫び声が聴こえたと思えば何をしているのですか?」
ぬっとコータとライブの頭の横から笑顔の老婆が顔を出す。
「うわあああああああ!!」
「なんだこのバーさん!!」
二人は冷や汗をダラダラ垂らしながら飛びのいた。
「ば、ばあさんや。わ、わしゃあ今、人魚をみたんじゃあ!! ホントじゃよ!!」
倒れた老人は必死に老婆に訴えかけたが、老婆は笑顔のままだった。
「ほっほっほ、おじいさん、きっとそれは夢をみたのですよ。あれほど深酒はやめなさいと言ったでしょう? さあ、暗くなる前に帰りますよ。」
「今日はまだ飲んでねーし!! ホントじゃし!!」
老人はぷんすかと怒っているが、老婆はそれを無視して二人の方を向き、そっとコータの頬に手を当てる。
ヒタリと魚のうろこを思わせる冷たい感触がコータを襲う。
だが、その手の冷やかさとは裏腹に優しい温もりが伝わってきた。
「バーさんは……あ……。」
その手首には泥人形の人魚と同じデザインだが、かなり使い込まれたアクセサリの一つがはめられているのが横目についた。
「人魚なんていませんよ。でも、ありがとう優しい坊や達。」
そう一言告げると、老人は騒がしく、老婆は静かに街へと消えていった。
「に、人魚はホントに居たんだな……。」
「……うん。」

 終わり


posted by 冬待 犬都 at 16:26| 日記 | 更新情報をチェックする
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