2015年11月10日

デフォルメ


 現在ネーム進行中です。
今回、本編と番外編の二編を描くつもりですが、ここで少し欲張ってそれぞれで画風を変えて作ろうと考えています。
ページ数の少ない番外編から先に取り掛かっているのですが、番外編では主人公の幼年期というのも踏まえ、少し絵柄を緩くデフォルメをしようと思い立ちました。
いろいろ描き試してみて、今回はこのように画風を変えることにしました。

 20151108.jpg

 登場人物であるコータとライブのラフです。
目と頭を大きく、肩幅を狭く、頭身を低くデフォルメしました。
基本的にアクションの殆ど無い作品ですので、どちらかと言えば会話や行動の表情変化やコミカルさが重要だと考え、それを前面に出せるデザインだと思います。
番外編につきましては、このような感じで緩く、柔らかい作風にしようと思います。
対して本編では若干のデフォルメは加えるとは思いますが、普段通りに近い感じで作ろうと思っています。
posted by 冬待 犬都 at 13:12| 日記 | 更新情報をチェックする

2015年11月02日

 最近の不安


 スクリーントーンが苦手だ。
貼り付けて切り取って削ってとかそういう技術的な部分ではなく、自分の描いたものに対してスクリーントーンを貼った状態の画面をイマイチ想像できない。
スクリーントーンを使った経験に乏しいせいだと思う。
昔、アナログで漫画を描いてた時もトーンは使っていたことはあるが、一枚数百円のシロモノをガンガン使える程裕福では無かったし、何より昔とは描く絵の質が全く違う。
昔の自分の絵なんぞ見ようものなら、顔面のあらゆる穴から墳血する可能性もあるかもしれない。
デジタルに移行してからはカラーを扱うことが多く、というかそもそも漫画を殆ど描いていなかった。
故に、スクリーントーンを使った画面を殆ど想像したことが無かった。
なので、今回どうやったら自分の絵をスクリーントーンで自分らしくできるか、を模索してみた。
結果がコレ。

 20150912-1.jpg

 これはモノクロではなく、正確にはモノクロで描いたものをフルカラーで保存して縮小したもの。
モノクロのモノクロ保存で縮小をかけると殆どのスクリーントーンが見事に潰れた。
このことに関していろいろ調べてはいたが、やはり"紙面印刷を前提とした高解像度で描いたモノは、web用に縮小すると潰れて見れたモノではない"ということである。
だが縮小をかけなければ、印刷用の原稿はサイズが大きすぎる。
印刷用は印刷用、web用はweb用で最初にキチンと決めておかなければならないらしい。
描いたものをココにアップロードするにも、かなりの荒れを覚悟しなければならないか。

 更に不安を掻きたてるのは、"実際に印刷した場合はどうなるのか?"という疑問である。
原稿等の規格は調べ上げて情報通りに整えてあるので問題は無いとは思う。
だが、"スクリーントーンを貼る場合や線細さはどの程度まで耐えることが出来るのか"ということを、モニター上では確認することができない。
実際に印刷をした経験が皆無なのだから、加減が分からないのである。
これが今抱いている最大の不安だ。
確認する為のモノクロレーザープリンタ等は10万円とかするようなのでとても手が届かない。
不安だが、とりあえずやってみるしかないのだろう。



 それと、本編のプロットが一応完成したのでそれも投稿しておく。
ネームの段階で一部切り飛ばしたりして場面の長さを整える必要はあるだろうが、とりあえずはこういう話を今回は描くことにした。
ページ数は36ページくらいを予定。

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 大きな大きな丸い月。
我々がいずれ其処へと達する日はやってくるのであろうか。

 歴史小説家 ミズノ著『月の石』より



 998年9月、黄金色の砂が彩る交易都市パスタゴ。
この街は上流階級の住む丘の上のアップタウン、平民層の暮らす港近くのダウンタウン、様々な露店が寄り添い巨大なアーケードを作るセントラルタウン、雨天時や災害時に利用される地下都市アンダータウンの四つに分けられる。
長い群青の美しい髪を持つ少年コータはこの日、目玉程の大きな宝石を片手に持て余しながら、アップタウンの夜道より帰路に着いていた。
「今日は月がデケェなぁ。ジャイガンティックムーンって言うんだっけか?」
この晩、闇夜に浮かぶ月は空を覆い尽くさんばかりのサイズになっており、街は月明かりによって眩しく照らされていた。
宝石を月光に晒して覗き込む。
「さてなあ、コイツはどうしようかな。質にでも流すか?」
この宝石、サイズだけを見てもかなり高価なシロモノだと分かる。
しかしながら、コータ自身は光物に興味がそれほどない事に加え、今晩夕食を共にした男からプレゼントされたものだ。
晩の糧を得る為に色目を使いたらし込んだのだが、見知らぬ男からの贈り物を後生大事にとっておく趣味はコータにはなかった。
「そこ往くお嬢さん、占いなぞ如何かな?」
路地の片隅、ローブを被った如何にも怪しんでくださいと言わんばかりの男がコータへと声をかけた。
「ごめんなさい、急いでいるもので。」
(怪しすぎて誰も近づかねーだろ。)
そそくさと立ち去ろうとするコータだったが、ローブの男は素早く回り込む。
「いやいや、タダ!! 今日はお月様が綺麗だからタダだよ!! それとお嬢さんとっても美人!!」
(わあ、しつこい。)
どうしてもコータを引き留めたいのが全ての行動から見て取れる。
「あ、月からウサギが。」
コータは注意を逸らして逃げ出してしまおうと考えた。
「!!」
それを聴いたローブの男の様子が豹変した。
「うわああああああああ!!」
ローブの男は大慌てで路地裏へと駆け出してゆく。
「何だアイツ。ま、いーや、かえろ。」
コータは再びダウンタウンにある自宅へと向かった。



 コータがボロの木造小屋へとたどり着き結った髪を解いて着替えると、薄手の屋根がパタパタと音を鳴らし始める。
宝石をころころと掌で弄びながらコータが窓の外を見上げれば、薄暗い雲が月を覆い隠そうと暗躍していた
「ん、雨か……。こんなに月がデカいってのにもったねー話だな。」
その時、手の上から重さが消える。
「え?」
汚らしいローブの男が、窓の外から宝石をもぎ取っていったのだ。
男は振り返りもせずに一目散に逃げ出す。
「やろう!! 返しやがれ!!」
コータは着の身着のまま、窓の縁を蹴ってローブの男を追いかけた。
幸いにもローブの男はそれほど足は速くなく、コータの足で追跡するとみるみる距離が縮まっていった。
「捕まえた!!」
コータがローブの男に飛びつき二人はそのまま転倒する。
男のローブのフード部分が外れ、お互いに向き合う形となった。
「ぎゃああああああああああ!!」
「ああああああああああああ!!」
コータは驚きのあまり悲鳴をあげた。
更にローブの男もコータの悲鳴に驚いて釣られて叫んだ。
その男、全身に白い毛を纏っており、更には真っ赤な目、そして長細い耳を頭から突き出している。
例えずとも分かるほどにウサギだった。
おののくコータを尻目に、ウサギは再び逃げ出す。
「あ、逃げんな!!」
雨雲が空を制圧し、街はすっかり暗くなり泥人形の支配下に置かれた。
裏路地を抜けたところ、ようやく白い耳をとんがらせたウサギを見つけることができた。
「見つけたぞ宝石ドロボウが!!」
「え?」
コータがウサギに飛びかかる。
しかし、そのウサギはコータにのしかかられるとまるで砂のようにボロリと崩れ落ちた。
「へ?」
泥が再び崩れた部分を補修し、ウサギは元の形へと戻る。
「な、なんですかなアナタは?」
ウサギは雨と黄砂の作り出した泥人形だった。
「ど、泥人形……? お前は一体何モンだ……?」
ウサギは極めて紳士的に衣服を整え、泥を掃うような仕草をすると、コータに向き直った。
「私の名はジャック。バウアー国の王子で御座います。」
「は、はぁ? その王子さんが何でこんなとこにいやがるんだ?」
「石を探しておるのです。大きさはどの程度でも――いえ、大きければ大きい程良いのですがね。こう、月にかざすとキラキラと光って美しい石です。」
「石って、やっぱひょっとしてアレのことか……。」
コータはローブのウサギに奪われた宝石を連想した。
「ご存知なのですか? その石は愛を呼ぶ石と言われておりましてな。我が国では王位に就く際に、フィアンセに石を捧げて妃とするという習わしがあるのです。」
「ふーん。ちなみに、石を手に入れたら何処へ帰るつもりなんだ?」
「それは勿論、故郷にすぐ戻るつもりで御座います。私がこの国に滞在できる時間は非常に短いですから。」
懐から不可思議な形の懐中時計を取り出す。
その時計は見た限りでは針が存在しておらず、ただ月の絵が描かれているだけのシロモノであった。
ウサギは空を見上げる。
「ですが、今は故郷が見えず、ほとほと困り果てております。」



 「以前、人魚なんてものは見たことがある。だからまぁ、ウサギ人間なんてのも居るかもなあってのは分かる。でもな、月からやってきたなんてまるっきりお伽噺じゃねーか。」
「我が国は文明が栄えておりますからな。我が故郷がこの国にもっとも近い期間だけ、行き来が可能なのです。」
ウサギに連れられ、コータはダウンタウンの外れにまで来ていた。
降り注ぐ雨がコータの肌を濡らし、張り付く髪を鬱陶しそうに掻き上げる。
「なるほど、それが月が最も近づいて大きく見える時、ジャイガンティックムーンってわけね。そんでオレから石を奪っていったヤツが、今回来たやつか。」
「まったく力づくで奪い取るなんて、我が国の恥、しょっ引いて国に連れ帰ってやります。」
ウサギは見た目に依らず正義感が強いのか、同胞の罪を嘆き息巻いている。
(ま、お前は泥人形だから、もうとっくに帰った後なんだけどな。)
そうこう話しているうちに、やや小ぶりの家屋にたどり着く。
「ここが我等が代々この国に来ている時に拠点にしている部屋です。おそらく、その者もここに戻るかと。」
「よーし盗人野郎め、目にモノ見せてやる!!」
コータが扉を強引に蹴り飛ばすと、そこには予測通りローブ姿のウサギが居た。
「観念しな!! つるし上げて鳥の餌にしてやるぜウサギ野郎!!」
「ひぇ!!」
ローブのウサギはテーブルに伏して怯えている。
「まぁまぁコータ殿、石は返しますからどうか穏便に――」
泥人形のウサギがコータを抑えて前に出る。
「!!」
現れた泥人形ウサギを見て、ローブのウサギは更に驚いた。
「わ、私!?」
「はい?」
泥人形のウサギはポカンとしている。
「間違いない、20年前にこの国に来たときの私の姿だ!!」
「何を言って――」
「あー、なるほどな。そういうことか。」
コータが我が物顔で手近なタオルで頭を拭きながらベッドに腰を掛ける。
「おめーはこの国に来たばかりの状態だから知らねーんだろうけど。この街の雨の日は、砂が雨を吸って過去の人間を泥人形として再現するんだ。だから今回はお前、つまり20年前のコイツが再現されて出てきたってことなんだろ。」
ウサギの泥人形は茫然としている。
「わ、私が、泥人形……。」
そうこう問答しているうちにも、泥人形の身体は少しづつ崩れ始めている。
「ほれ、雨の無い室内じゃ、もう崩れてきてる。さっさと外に出ろよ。」
泥人形のウサギはとぼとぼと扉の外へと向かう。
「では、20年後の私がここに居るということは……私は帰れなかったのでしょうか?」
「……そうだ。この石は、私達が考えていた以上に高価なシロモノだったようだ。20年前、私はこの石を手に入れることが出来なかったのだ。」
「そんな……。」
泥人形のウサギは絶望したように肩を落とした。
「そんじょそこらに転がってるもんでもねーからな。でもよ、無いなら無いで、帰りゃあよかったじゃねーか。」
「そうもいかんのだよ。」
あっけらかんとしたコータの横やりに、ローブのウサギが溜息を吐く。
「私達が帰るにはその石を月に掲げて一定のリズムで信号を送り、迎えを呼ぶ必要があるのです。」
「だが、今回もこの雨ではもう……次はまた20年後か……。」
泥人形のウサギが空を見上げると、その横にローブのウサギも並び使い古された懐中時計を取り出し、雨を恨んだ。
ウサギの持つ懐中時計の月の絵が、コチコチと円周の頂点からズレていっている。
「この石はアナタに返そう。」
ローブのウサギはコータへと宝石を手渡す。
「……。」
「私はこの街で余生を過ごすことにしよう……。」
ローブのウサギは既に諦め、泥人形のウサギもまた未来の自分の姿に深い悲しみを抱いていた。
「ったく、辛気くせー奴らだな。お前らの種族はみんなこうなのか?」
宝石を受け取り、コータは不敵な笑みで空を睨む。
「いくぞテメーら、本当に月に生き物が住んでいるのか、確かめてやる。」



 「オメーら両方とも同じ名前なワケだろ? 区別しづれーから名前変えようぜ。」
高い本棚に囲われた部屋の中、コータが行儀悪く机に座り本をパラパラとめくる。
泥人形が跋扈するこの街の特性上、雨天時には殆どの住民は地下都市であるアンダータウンで生活をしている。
故に、現在コータ達がやってきているこの市民図書館もガランとしたものであった。
「お前がクラウン、お前がジェスターでいいか。」
コータは泥人形のウサギをクラウン、ローブのウサギをジェスターと名付けた。
「いやいや私にはジャックという母から頂いた由緒正しき名が――」
ジェスターがコータに不平を唱える。
「今だけだから我慢しろよジェスター。クラウンはこんなに素直なのに、20年で変わるもんだな。」
雨水を汲んだバケツに両足を突っ込んで待機しているクラウンを親指でさす。
「コードネームみたいなものだと思えばそれほど気にはなりませぬよ。」
「だからと言ってジェスターというのは……。」
ジェスターは本を流し見しつつもブツブツと言っている。
「私も何かお手伝いしましょうか?」
クラウンが声をかけてくる。
「いや、おめーは雨水に漬けてねーとバラバラになるからジッとしてろ。」
「ならばせめてアイディアを……。例えば、雨雲を吹き飛ばすというのはどうですかな?」
「どうやって?」
「えーとその……ダイナマイトとか。」
パタリと本を閉じ、眉をひそめてクラウンに視線をやる。
「どうやって雲の所までダイナマイトを運ぶんだよ。というか、この雨じゃあシケって火もつかねーよ。」
「雲を吹き飛ばす……風……。」
ジェスターもその言葉で少し試案に耽る。
「雲まで行けないのなら、行ける生き物に頼んではどうだ? そいつに雲を吹き飛ばしてもらうのだ。」
「北風サマにでもお願いすんのか?」
「大きな鳥とか……鳥の群れとか。」
「そんなの見つける前にお月さんも待ちくたびれてどっか行っちまうぜ。というか、鳥を誘導する方法すらねーだろ。」
「む、ではこれではどうだ?」
ジェスターは続けて本を見せてくる。
そこには、羽を付けて空を飛ぶ人間の姿が描かれていた。
その絵を見てコータは渋い顔をした。
「羽を生やしただけで飛べたら、鶏だって地べたで暮らしてねーよ。」
「冗談だ。」
「うーむ……。」
3人は一斉に唸る。
(……。)
コータはジェスターに見せられた本を今一度眺めると、一枚の挿絵に目をとめた。
「そもそも、雲というモノに気を取られ過ぎているのがダメなんじゃねーか?」
コータが口を開く。
「しかし、雲をどうにかしないと、我等が故郷は見えもしないぞ。」
「確かよ、さっきお前がした話だと、この石を使った合図が届けばいいんだろ?」
「はい、そうですが……。」
「だったら、無理に雲をどかす必要もないわけだ。」
「言うのは簡単だが、実際に何か方法があるのか? 月明かりは見ての通り、雲間から若干見えることがあるが、弱すぎて石をかざしても光らないぞ。」
「いや、あったぞ。光を強くする方法。」
コータが本に描かれた大量の鏡を並べた装置の絵を見せつける。



 この街で最も高い建造物、灯台の屋上にて、透明のビニールシートを張り巡らせたテントの中。
コータはせっせと黄金の砂に水を練り込み、ヘラで削ってカタチを整えていく。
数刻前、コータはクラウンとジェスターに図書館でこう説明した。
「手順を説明するぞ。まずは雨避けの透明ビニールシートでテントを張る。ビニールシートはセントラルのアーケード街のヤツを何個か引っぺがしてくれば問題ないだろう。」
紙に想像図を描きこむ。
「次に、黄砂を大量に焼いて焼き砂にする。焼くのには雨水を飛ばす意味もあるが、何より焼き砂にした黄砂は激しく光を反射する。これが今回のミソだ。」
ガリガリとペンで尚も絵を描き続ける。
「そんで最後に、焼いた黄砂を水で固めてコイツを作る。」
コータが見せた絵は、円盤の中央をへこませたような形をした物体だった。
「これはなんだ?」
「コイツは、光熱兵器だ。」
「兵器!?」
クラウンとジェスター両名共に驚嘆した。
「ああ、この本によると、かなり昔の時代の戦争で、鏡を張り巡らして太陽光を集めて一点に集中することによって、その熱光線で敵の船を焼き払うという兵器が存在したらしい。」
「なんと!!」
「こいつを応用すれば、恐らくわずかな月の光も集めて強い光に出来るハズだ。特に、焼いた黄砂の光は鏡の反射の比じゃねぇ。見続けて目をやられたヤツもいるくらいだからな。」
「しかし、この砂は私同様、濡れると動き出すのではないでしょうか?」
「泥人形に変化するのは、どういうわけか雨水を吸った時だけだ。水道管から出てる水なら普通の砂と同様に固まるだけだから大丈夫だ。」
「なるほど。その為の雨避けのビニールシートですか。」
「あと、お前にこいつを預けておく。」
懐から宝石を取り出し、クラウンに投げて渡す。
「愛を呼ぶ石……?」
「泥人形のお前なら、雨に打たれても平気だろ。それに、合図の送り方も知ってるだろうし。コイツの光の収束する地点でお前がそいつを使え。」
時刻進んで再び灯台の屋上にて。
コータのヘラ捌きが止まる。
「おわったぁ……。」
金色の泥まみれになったコータがゴロンとその場に寝転がる。
目の前には暗い雨空の中でも金色に輝く凹面状のモニュメントが出来上がっていた。
「すごい輝きだ……!!」
となりでジェスターがつぶやく。
「よーし!! あとは雲の切れ目から月明かりが少しでも漏れてくれるのを待つだけだ。お前ら、全力で祈れ!!」
コータがモニュメントの端に、布きれでつくった人形を吊るしペンで顔を描きいれた。
雲の切れ間から少しだが、ぼんやりとした光が差しこむ。
「来た!! 今だ!!」
モニュメントを動かすと、光が反射して眩い光を放射する。
「石を掲げろ!!」
クラウンが宝石を光の交点へ差し出すと、宝石が月明かりを受けて変色する。
チカ、チカ、チカと手首を返し光を点滅させるクラウン。
雨雲の下からでもわかるほどの黒い影が、コータ達の上に落ちる。
雲を掻き分け、大きな船が現れた。
「あれが……月の!!」
「おお……おお……。」
ジェスターは船を目にし、大きな涙を零した。
どの図鑑でも歴史書でも見たことも無い造形の浮遊艇だった。
浮遊艇が建物の端に接岸すると、たくさんのウサギたちが船を降りてきた。
「王子!! ご無事でしたか!! お久しゅうございます!!」
現れたウサギのうちの一匹がジェスターへと飛び込んだ。
「やった、これでやっと帰れるんだ!! 心配をかけた、本当に……。」
ジェスターは飛びついたウサギを抱きしめた。
「よかった、私が独りぼっちにならないで。」
クラウンも戻り、コータの隣へやってきてはホロホロと目をこすった。
「コータ殿、ありがとうございます。雨があがれば私は消えてしまうのでしょうが、絶対にアナタへの恩は忘れません。」
クラウンが宝石をコータへと返す。
「ああ、結構苦労したんだ、精々恩に着ろよ。」
コータは船の様子から一切目をそらさず、その宝石を受け取る。
「コータ殿!!」
ジェスターが船の前から声を張り上げた。
「アナタの様な心優しく知性に溢れた人に出会えて私は幸運だった!! もし次に出会うことがあれば、誠心誠意お礼をさせていただきたい!!」
「そんじゃ、そん時はデッカイ城の一つでも建ててくれ。」
コータが宝石をジェスターに投げつける。
「これは……!!」
「トレードだ!! 代わりにテメーの持ってるあの時計を寄こしな!!」
ジェスターは懐に手を伸ばすと、時刻を表示していない懐中時計を取り出して投げ返した。
コータが手を伸ばし、時計を掴みとる。
「オメーも行けよクラウン。砂はこの街に帰るが、今のお前自身の帰るべきところはあそこだろ。」
クラウンの背中を押してやる。
「そうですね。私も行きます、お元気でコータ殿!!」
コータはクルリと背を向け、その姿を見送らずに灯台を降りた。
ほどなくして、街には赤い雨が降る。
赤い雨は黄砂が直接雲に混じると生まれるという。
(アイツ等も無事に雲の先まで帰れたか。)
コータは赤い雨をその身に受けながら、ジェスターの懐中時計を握りしめ泥人形の人混みに潜っていった。

posted by 冬待 犬都 at 07:41| 日記 | 更新情報をチェックする

2015年10月11日

まずは番外編から

 右上奥歯の歯神経のあたりがものすごく痛いです。
近くに歯医者が何軒もあるというのに、その全てが日曜祝日休みというのはどういうことなのでしょうか。
というか、銀行とか見ていつも思うのですが、一般の人間が休みになる土日祝日に閉めて、働いてて来れない平日の時間に開けておくというのはどういうことなのでしょうか。
この構造に何か理不尽さと違和感を感じるのでそのうちネタにしましょう。


 現在の作業状況です。
まず結論から、本編36ページと短い番外編12ページ前後の2編を作ることにしました。
いろいろ考えた結果、本編でいろいろ説明してるとページ数が足りないとか、内容が説明臭くてくどくなるとかそう言ったことを考えたら、いっそ思い切って2本描こうと思い切りました。
番外編は世界観を補足したりする導入編として軽く描くつもりです。

 今回は何か中心となるモノをガッチリ決めてそれをメインに掘り進めようと考え、話を考える前にタイトルから決めました。
タイトル名は「砂と水のヒストリア」です。
あからさまに「砂」と「水」と「歴史」がテーマの作品です。
テーマが決まったからと言ってすんなり行くわけでもなく、既にプロットを4〜5本没にしてます。
おかげでいろいろ設定や世界観、作品の方向性はなんとか固まって来ました。
とりあえず、まずはバトル的な展開や過剰なバイオレンス表現は避けるように気を付けようと思っています。
爆発もしません。
恐らく、推理、探偵的な側面の方が強くなるかと思われます。
また世界観に関しても世界そのものではなく、一つの街だけでの物語に終始するようにします。
壮大なスケールみたいなものをは捨てて、一つの街を掘り進めることにより、濃密な街にしたいと思っています。
あと、主人公の設定はいろいろ弄り回してますが、キャラクターデザイン自体は過去の没ネタから変わってません。
グダグダ何か言ってますが、とりあえず今回は番外編のプロットを載せておきます。
12ページ前後くらいを目安にしているので、短めです。

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 黄金が泥に変わる雨の日は、ふとしたことで思いがけないものを目にする。
その日は丁度、そんな日だった。

 歴史小説家 ミズノ著『海辺の隣人』より



 993年7月10日、激しい雨が小さな木造小屋の屋根を激しく叩いている。
時折大きな音がガタンッと鳴ると、建物そのものが大きく揺れるような振動が伝ってくる。
その度にギクリと上を見上げながらも、二人の少年達は屋根が落ちてこないように祈りつつ本棚を漁っていた
「ライブ、そろそろもどろーぜ!! こんなボロ屋じゃあいつ崩れてもおかしくねーよ!!」
「まってまって、あと1冊だけ!!」
ライブと呼ばれた白いクセッ毛メガネの少年は、慌てて本をカバンの中へと押し込もうとする。
「早くしろよな。」
その様子を見て溜息を吐くと、長い群青の髪の少年コータは窓の外に目を移した。
窓の外では矢のように浜辺を穿つ天滴と、それに撃たれようと平然として歩き回る無数の人影達が見える。
パッと見ればそれはただの人影なのだが、アレ等は人間でないことをこの街の人間であれば誰でも知っている為、コータにとっては特別驚くような事象でもなかった。
あの、あたかも人間のように振る舞っている奴らは、雨の間だけ我が物顔で街を徘徊する単なる泥人形。
少し普通でない部分に触れるとすれば、まるで意志でもあるかのように好き勝手に動き回ることくらいだ。
「大体よお、そもそもここはオレんちで、そこ等の本が濡れたって別にお前は困らないだろ。」
窓の桟に肘をかけて、再び一心不乱に本を仕舞いこもうとするライブに向き直る。
「いやいや困るよ。ここには貴重な資料が沢山あるし、雨に濡れて台無しになったら僕の天才的な頭脳の持ち腐れだよ。」
「自分で天才とか言うか。図書館行けよ。」
「ここが一番落ち着くんだよ。」
ライブがコータへ朗らかに笑いかけた。
「何だかんだ言いつつ手伝ってくれるコータは優しいよね。」
「チッ。」
こうも屈託のない笑顔を向けられると、コータも流石に文句をひねり出す気も失せたようだった。
少し恥ずかしそうにそっぽを向き、また雨の景色を観賞しだす。
「ん?」
その雨の中に一つ、変わった動くものをコータは見つけた。
「おいライブ、ちょっと来てみろ。ありゃあなんだ?」
カバンの紐を結んでいるライブを手招きで呼ぶ。
「ほらアレ、あの足引き摺ってるみたいなヤツ。人間? なのか?」
「にん……ぎょ……?」
もう少し二人が目を凝らしてみると、その下半身にはヒレのような形をしているのが確認できた。
「うん、昔本で見た人魚の挿絵に似てるかも。上半身が人間で、下半身が魚のヤツ。」
そう言ってライブがササッと人魚の絵を描いて見せると、コータは絵を取り上げ訝しげに睨んだ。
お世辞にもライブの描いた絵は上等とは言えず人魚と言うよりは腕の生えたヘビに近かったが、何を言わんとしているかは付き合いの長いコータは察することができた。
「……アホくせー、人魚なんてそんなお伽噺じゃあるめーし。」
「でも、この世にはまだ知られていないことが沢山あるんだよ、父さんが言ってたもの。行ってみようよ。」
「マジで?」
コータは不平そうに下唇を釣り上げた。



 コータとライブが傘を差し、人魚の元まで駆け寄る。
しかし、この土砂降りの雨の中では二人のさしている小さな傘など気休めにしかならず、結局二人は体半分が水浸しのような状態であった。
「うん、やっぱり人魚だよこれ、足が魚の形してるもの。」
二人をまるで意に介さず、人魚は浜辺をナメクジのようにじっとりと這いずっている。
「この人魚は何をしていたんだろう? 海に帰るのかな?」
「海とは逆方向に進んでるから、街の方に向かってるんじゃねーか?」
「移動するのも辛そうなのに何でだろう?」
ライブは何かと感情移入をしやすい性格であり、人魚の様子を見てるだけで不安げだった。
「こいつは結局は泥人形だから、昔にあったことだ。まぁ、しばらくみてりゃ何か分かるだろ。変に手を出そうとすんなよな。」
「……わかったよ。」
コータはライブが今にも人魚の手助けをしたいとでも言いだしそうな気配を感じとり、先手を打って釘を刺しておいた。
この街に雨の間だけ現れる泥の生き物たち。
これ等は実際には"今"を生きているモノではなく"過去"に生きていたモノであることが、昨今の学者達の研究の結果判明している。
この泥人形達は、この土地の黄砂に雨が混じると生まれるようで、いつの時代の過去が現れるかは雨の成分とかが影響しているのだとか。
何にせよ、この人魚は泥人形である以上過去の出来事を再現しようとするのである。
二人は黙って人魚を観察し、その行動を見守った。
人魚が海辺の防波堤を超えた先、苔むした犬の石像前までたどり着いたところで歩みを止め、像の台座の根本に寄り掛かって腰を下ろす。
「休憩?」
「さあな、案外ここが目的地なのかもな。」
それっきり人魚はその場を動かなかったが、たまに空を見上げたかと思えばふぅと大きなため息を何度も吐いていた。
この様子を眺めて小一時間、コータもライブも動きのない観察にやや飽きが来ていた頃。
次第に雨脚が弱くなり、けたたましい雨の音も聴こえなくなってきた。
「やばい!! 雨が止みはじめたぞ!!」
「雨が止んだらあの人魚も崩れちゃうよ!! どうしようコータ!!」
コータは少し考えると、一つの案を閃いた。
「えーとバケツ!! バケツに雨を溜めておくんだよ!! 急げ!!」
二人は自宅に一目散に戻った。



 バケツになみなみと雨水を蓄え人魚の泥人形の元に引き返した頃、既に雨はあがり太陽がカラカラと辺りを蒸し焼き始める。
日光を照り返す黄砂の輝きが、まるで街を黄金のように彩り直し、それと共に泥人形に支配されていた街にも人々の活気が戻り始めていた。
「あーあ……やっぱり間に合わなかった。」
泥人形の人魚はカタチが崩れ、砂に戻りかけていた。
「とりあえず一か八か、雨水をぶっかけてみようぜ。」
コータが人魚のなれの果てにバケツの中身を浴びせる。
すると、人魚は再びその姿を取り戻し、肩を大きく動かす。
「よっしゃ、元に戻った!!」
「やった!!」
二人が意気揚々とスパンコールする傍で、人魚の泥人形は指で地面をなぞり始めた。
「お?」
ピタリと止まってその様子を凝視する。
「この国の言葉みたいだけど、ちょっと字が汚くて読めないね。コータは読める?」
コータも十分に字が読みとれたわけではなかったが、かろうじて読めた部分の前後から意味の繋がる文脈に直して解読した。
「んー……あるべ……る……とさんへ……わた……しは……まってい……ます……。」
「メッセージなのかな。」
「っつーことは、この人魚は誰かと待ち合わせをしてたってことか? メッセージなら、だれかが見に来るはずだしな。」
そうこう話しているうちにも、人魚の泥人形はじわじわと水分を失って砂に戻りかけていく。
「ねえコータ、そのアルベルトって人探しに行こうよ。このままじゃかわいそうだよ。」
「始まったよ……。」
お人好しが過ぎる友人の言葉にコータは頭を抱えた。
「お前だって知ってるだろ、こいつは実際にはもうここには居ないんだっつーの。泥人形助けたってなあ……!!」
「コータは知りたくないの? 本当に人魚が居るなら、これは歴史的大発見だよ!! このまま放っといたら何も分からないまま砂に戻っちゃうよ!!」
「う……ぐ。」
ライブがコータの好奇心に揺さぶりをかける。
コータ自身は未知への探求心が人一倍強く、本来ならばライブ以上に駆け出したいのはコータの方であった。
しかし、今回彼が渋っているのには一つの理由があった。
「ライブ……実はオレ、魚……苦手なんだ。」
「あ、それで今日はこんなにグズッてるんだね。」
ライブが満面の笑みを浮かべると、コータは忌々しそうに人魚に視線を向けた。
「うっせーよ。わかった!! 今から本気出すからな!!」
「うん!!」
コータが悪寒を堪えて人魚を見下ろすと、よくよく見てみるといくつかのアクセサリーを付けているのが見受けられた。
「ひょっとしたら分かるかもしんねー。天才人間図書館のライブくん、こん中で分かるモノあるか?」
ライブに人魚の泥人形が模しているアクセサリーのいくつかを指して見せる。
まじまじと見つめた後、ライブは残念そうに首を横に振る。
「ごめん、僕が今まで読んできた本には載って無いね。デザインも全く違うし。」
「そうか、じゃあある程度絞れたな。」
「え?」
「だってお前が読んでる本は大体歴史書とか、そういう古い本ばっかだったろ。殆どの本を丸暗記してるお前がわかんねーって言うんなら、比較的新しいものに違いねえぜ。」
気落ちしているライブの背中をバンバンと叩く。
「見た感じ今風ってデザインでもねーかな。きっと30年とか50年とか、そのくらい前のものだろ。」
「なるほど、知らないって言う事から分かることもあるんだ!!」
ライブは目を輝かせて感心している。
「そんなに古くねーんなら雑貨屋とか仕立て屋とかに聞いてみれば、どの時代のモノかは分かる。時代が分かれば大体年齢も絞れる。年齢を絞って名前の聞き込みをすれば、案外見つかるかもしれねーな。」



 二人は比較的老舗の雑貨店やコータが下働きをしている仕立て屋等を回り聞き込みをし、その後は街のアンダータウンの老人会に顔を出したりなんだりをした。
それが終わる頃にはすっかり夕焼けが街を燃やしていた。
「じーさん!! 早く早く!!」
「年寄を労わらんかいまったく。」
「すみません、コータってばすっかり興奮しちゃって。」
終わる頃にはライブ以上にコータの方がすっかりのめり込んでいた。
二人が老人を連れて犬の石像の元へたどり着くと、人魚の泥人形はもう殆ど原型を留めていなかった。
「なんじゃこんなところに連れてきおって。」
「アンタに見てもらいたいもんがあるんだよ。」
コータは石像の脇に置いておいたバケツを持ち上げる。
バケツの中の雨水も残り少量となっていたが、石像の前の砂の塊に惜しげもなくざばっと降り掛けた。
黄砂が再び、人魚の姿を模し始める。
「よし、まだ大丈夫だったか。」
「ん? おお? これは……人魚!?」
老人がその姿を見ると腰を抜かしてべしゃりと尻もちを着いた。
「え? じーさんを待ってたんじゃねーのこの人魚?」
「まさか人違い?!」
予想外の老人の反応に二人も仰天する。
だが、人魚は老人に飛びつくと、首に腕を回して抱き着いていた。
「ぬああ!? なんじゃあこりゃあ!!」
老人の叫びと共に、人魚の泥人形は崩れ落ち、再び砂に戻っていった。
「どういうこった?」
泥だらけになった老人を眺め、二人の頭には大きなクエスチョンマークが浮かんだ。
「おやおやおじいさん、叫び声が聴こえたと思えば何をしているのですか?」
ぬっとコータとライブの頭の横から笑顔の老婆が顔を出す。
「うわあああああああ!!」
「なんだこのバーさん!!」
二人は冷や汗をダラダラ垂らしながら飛びのいた。
「ば、ばあさんや。わ、わしゃあ今、人魚をみたんじゃあ!! ホントじゃよ!!」
倒れた老人は必死に老婆に訴えかけたが、老婆は笑顔のままだった。
「ほっほっほ、おじいさん、きっとそれは夢をみたのですよ。あれほど深酒はやめなさいと言ったでしょう? さあ、暗くなる前に帰りますよ。」
「今日はまだ飲んでねーし!! ホントじゃし!!」
老人はぷんすかと怒っているが、老婆はそれを無視して二人の方を向き、そっとコータの頬に手を当てる。
ヒタリと魚のうろこを思わせる冷たい感触がコータを襲う。
だが、その手の冷やかさとは裏腹に優しい温もりが伝わってきた。
「バーさんは……あ……。」
その手首には泥人形の人魚と同じデザインだが、かなり使い込まれたアクセサリの一つがはめられているのが横目についた。
「人魚なんていませんよ。でも、ありがとう優しい坊や達。」
そう一言告げると、老人は騒がしく、老婆は静かに街へと消えていった。
「に、人魚はホントに居たんだな……。」
「……うん。」

 終わり


posted by 冬待 犬都 at 16:26| 日記 | 更新情報をチェックする
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